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2021/7/14 脱炭素化社会が抱える問題 ~化石燃料の必要性~

 先進国を中心として、世界が脱炭素化の流れになってきています。各国が、CO2排出制限目標を掲げる中、日本も、2050年までに0%の削減目標を立てました。実現に向けた動きが加速していくと思われます。

 脱炭素化には、太陽光発電、風力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーによる発電が必要不可となります。既に、欧州諸国は、世界に先駆けてそれに取り組み、発電量に対して再生可能エネルギーの比率(2019年)は、ドイツは42%、英国は39%、スペインが38%となっていますが、日本は18%と、主要諸国では出遅れ感があります。
 何故、日本は、発電量に対する再生可能エネルギー比率が主要国に対して低いのか、要因はいくつか上げられます。

 第1に、発電コストが高いことが挙げられます。日本の国土が狭いことから、発電所建設に適する広大な土地買収、機材の生産や工事にどうしてもコストがかかってしまいます。そのコストは、電気料金に上乗せされ、企業や家庭の負担となり、国の経済成長の妨げの要因にもなります。

 第2に、発電環境の問題です。日本は平野が少ないため、クリーンエネルギーの代表格である太陽光発電所や風力発電所を設置するのが難しいことです。そこで、山間部に設置していると所もありますが、自然環境破壊といった負の側面も出てきます。7月3日(土)起きた、熱海伊豆山地区での土石流災害は、一部では、山間部に設置した太陽光発電所建設の為の森林伐採により、山の保水力が著しく低下したことが原因とも囁かれています。

 第3には、エネルギー変換効率が低いことです。水力発電を除いて、太陽光発電や風力発電など主力となる再生可能エネルギーの発電効率は、 火力発電や原子力発電よりも低くなってしまいます。

 そして最後に、発電量が天候や季節といった 環境的要因に左右されるため安定しづらいという点があります。 天候の悪化などが続いた場合、電力の供給が滞ったり、 需要と供給のバランスが崩れて大規模停電の原因になるといったリスクがあります。

 以上4点が挙げられますが、今後の技術革新により、様々な課題をクリアしていかなければ、2050年までに、CO2排出削減目標の0%は夢物語となりますが、ここで、本質的な疑問が頭をもたげてきます。何故CO2排出をゼロにしなければならないのかという疑問です。地球温暖化と二酸化炭素排出の因果関係は、未だはっきりしていません。世界の潮流は、脱炭素化ですが、このままその流れに任せていいのでしょうか。

 菅首相が所信表明演説で「2050年までに二酸化炭素をゼロにすることを目指す」と述べましたが、この「2050年CO2ゼロ」は欧州で流行していたもので、日本はそれに追随したものです。中国も2060年と10年遅れでゼロにすると宣言しました。しかし、この「ゼロ」は、中国を利するところが大です。

 いま太陽光発電、風力発電、電気自動車などの大量導入を進めるとなると、最終製品はもとより、インバータ―やバッテリーなどの半製品の形でも、中国製品が大量に日本に入り込んでくることになると予測されます。仮に中国製品を排除し、国産化したとしても安心できません。というのは、太陽光発電や風力発電の大量導入には莫大な資源が必要となって、その資源調達の段階で中国依存が高まる懸念があるからです。

 太陽光発電や風力発電は、確かにウランや石炭・天然ガスなどの燃料投入は必要ありません。しかし、一方で、巨大な設備が数多く必要であるため、鉱物資源を大量に必要とします。セメント、鉄、ガラス、プラスチックはもちろん大量に必要となり、希少な鉱物資源であるレアアースも、大量に必要になります。従って、太陽光発電と風力発電を推進すると莫大な鉱物資源が必要になります。

 日本も米国も、すでにあらゆるハイテク製造業において、レアアースの調達を中国に依存しています。今後、太陽光発電、風力発電、電気自動車などの大量導入をすると、仮に国産化するにしても、レアアースを筆頭にサプライチェーンの中国依存が深刻化するリスクが大きくなります。

 また、太陽光発電パネルの原材料であるポリシリコンの世界市場シェアですが、世界の45%がウイグル地区のもので、残りは30%がウイグル以外の中国であり、中国は合計で75%となり、ほぼ中国が世界シェアを占めています。米国バイデン政権は、ウイグル地区での強制労働に関与した制裁として、中国のポリシリコンは、輸入禁止となっています。

 以上、述べてきたように、脱炭素化の流れは、高コスト体質による経済の衰退、中国依存を高めるリスク、そして、世界的に非難されているウイグル地区の人権問題と、様々な問題が横たわっていることを、認識した上で、脱炭素化を考えていく必要があると思います。

 エネルギーは経済成長にとって不可欠のインフラのひとつですが、先進国と発展途上国とでは持つ意味合いが若干違うと言えます。先進国では、既に産業構造がエネルギーをたくさん消費する形態ではなくなっており、経済成長とエネルギー消費の増加に関する関連性は強いものではなくなっています。

 ところが、発展途上国の中には、工業化により経済成長を達成している国が数多く存在し、そうした国ではエネルギー消費は産業部門によって牽引されており、非常に大きな伸びとなっています。通常、こうした段階にある国はGDP成長率とエネルギー消費量の成長率が大体同じくらいの伸びで増えていくということが経験的に言えます。

 「化石燃料はもうお仕舞いだ、脱炭素だ、これからは太陽光発電と風力発電だ」、という報道がされていますが、実態はどうでしょうか。世界の最終エネルギー消費は、2009年から2019年の化石燃料(石油、石炭、天然ガスの合計)の割合は80.3%から80.2%とほぼ横ばいですが、再生可能エネルギーの割合は、8.7%から11.2%へと微増しただけです。しかもその内訳を見ると、太陽光発電、風力発電等は2.4%しかありません。化石燃料はお仕舞いになるどころではありません。

 インドネシアを中心としたASEAN諸国の経済成長を牽引するのは、化石燃料によるエネルギー消費です。急激なエネルギー転換は、国の経済成長を削ぐ要因になります。当社は、インドネシアでの港湾事業、そのメインである、オイルタンクターミナル建設に参入しています。この施設の建設は、今後のインドネシア経済の発展に寄与する国家事業であり、当社の発展にも繋がるものです。

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