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2017/12/27 ~香港株式市場の現況と自由都市香港の今後の在り方~

 12月19日から21日までの3日間、香港視察に行ってきました。往路にて、今までその雄大な姿をみせることがなかった富士山が、今回ははっきりと視界に広がりました。改めて、日本の象徴的な山であると実感し、今回の視察がより良いものとなることを確信した瞬間でした。

 今回は、主に、香港の金融街の中心地である香港島の中環(セントラル)を視察しました。
その中環(セントラル)に着くと、香港名物2階建てトラムに遭遇します(写真下)。
日本では珍しくなった路面電車ですが、2階建てというユニークさもあり、思わずシャッターを押しました。

 写真左は、中環(セントラル)にある香港証券取引所が入居するビルです。ここで、香港株式市場の現況をご説明します。
 香港株式市場は上昇トレンドが続いています。2015年4月以降続いた香港株式市場の下落局面は2016年2月に安値を付けて以降、反転、上昇トレンド入りしました。
 香港株の割安感は依然として強く、MSCIワ-ルドインデックス(MSCI指数の一つで、米国のMSCI Inc.が算出・公表している、日本を含む世界の主要国(先進国)の株式を対象とした株価指数をいう。)の株価収益率(PER)が約21倍なのに対して、香港株(ハンセンH株指数)は10倍にも満たない数字となっています。

 その背景にあるのが、人民元安トレンドです。
中国通貨当局による人民元切り下げ実施(2015年8月)以降、人民元の下落トレンドが継続され、人民元安は元建て資産の価値低下に繋がるため、本土投資家は資産保全のため海外投資に注目を集め出しました。
その流れを加速させたのは、2014年11月、上海-香港間の株式相互取引制度が開始されたことです。
従来、本土投資家は香港株を自由に売買することが原則出来ませんでしたが、本制度の導入によって香港株投資制限が緩和し、結果、本土投資家による香港株投資が活発化することとなりました。さらに、2016年12月5日には深圳-香港間の相互取引も開始したことも、追い風になっています。

 しかしながら、ここにきて香港株は高値圏で上値が重くなっています。
 代表的な指数であるハンセン指数は11月下旬に10年ぶりに3万円台を回復しましたが、その後は利益確定の売りに押されがちになっています。中国の金融引き締めに対する懸念がその要因です。
 中国は、12月20日に、2018年の経済運営方針を決める中央経済工作会議を終えましたが、金融政策は、銀行貸し出しや企業の資金調達の伸びを抑える方針です。現預金総額(M2)の伸び率は縮小傾向とはいえ、企業の債務は膨らんでおり、当局は、引き締め方向の金融政策を続けることで経済成長のスピード調整を進めるとみられます。

九龍から香港島の高層ビル群を臨む

 香港は、ビジネスを行う上でとても魅力的な都市であることは言うまでもありません。米ヘリテージ財団は、23年連続で香港を世界で最も自由な経済体と評価しました(2017年2月)。また、カナダのシンクタンク、フレーザー・インスティテュートは、2016年度「世界経済自由度報告書」でも、対象159ヵ国・地域中第1位です。
 このような、香港に対する高評価は財政の健全性や低税率、経済活動の自由度をはじめ、伝統的な自由主義的経済体制に起因していることを忘れてはいけません。
 一方で、「基本法(香港の憲法)」の解釈権を全人代が有していることや、「中国本土の介入により香港の司法制度が脅威にさらされる」といった法の支配に対する憂慮は、司法の独立が認められている香港と中央の特殊な関係は指数に反映しにくく、将来におけるリスクとなり得ます。

 一国二制度の政治体制により、中国の政治的思惑に翻弄されてきた香港です。中国は、「香港の繁栄」を「経済成長の維持」として利用してきたというのは、過言でしょうか。香港返還20周年を迎え、その記念式典で習近平国家主席は、「香港の『1国2制度』は世界が認める成功を収めた」と述べましたが、「自由でオープンな(開かれた)香港」が保障され、国際公共財としての価値を持ち続けることができる「香港」が、将来に亘って約束されることを心から願ってやみません。

 天候にも恵まれた今回の香港視察は、今まで以上に示唆に富んだ有意義なものになりました。
香港の地を踏むごとに、香港という特殊な位置に置かれた背景のもとに形成された商習慣や社会風土を少しずつ肌で感じてきています。

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