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2018/2/19 “郷に入っては郷に従え”

~春節を迎える香港、そして香港アイデンティティー~

 1月末、香港視察の為、香港国際空港を降り立ちました。
 幾度となく香港を訪れていますが、この時の香港の街の雰囲気がいつもと違った感覚であったのは、同行した人たちが一様に感じたものでした。それが、明らかになってきたのは、空港からチャーターしたバスに乗り、尖沙咀に向かう時。そうです、春節が間近だったということです。

 2月16日、中国では春節と呼ばれる旧正月を迎えました。
 “春節=中国人観光客による爆買い”というステレオタイプ化したイメージを抱く人は少なくないと思いますが、春節を祝うのは中国だけではありません。
中国と同様に祝い、法定の休日となる国には、アジアでベトナム、インドネシア、北朝鮮、韓国、シンガポール、マレーシアがあります。

 各国の事情をみてみますと、ベトナムの旧正月休みは最も長く、9日間にもなります。インドネシアは最も短く、1日のみで、シンガポールとマレーシアは2日間で北朝鮮と韓国は3日間です。平昌オリンピックが開催されている韓国では旧正月が非常に重要な祝日で、遠くに住んでいても帰省し、一家が集まります。この期間のオリンピックの入場券販売率は下落する見込みのようです。また、タイとフィリピン、モンゴルにも旧正月を祝う伝統はあります。ただモンゴルではチベット暦に基づいて旧正月(ツァガーンサル)の日を高僧が決めています。元々日本も明治維新の前までは旧暦を使い、旧正月を祝っていました。しかし、1872年11月9日に布告され、後1ヶ月未満にもかかわらず、1872年12月3日に西洋暦である新暦に変わったため、それ以来、旧正月は祝いません。

 このように、日本以外のアジアの国々では春節を祝う習慣がありますが、何と言っても膨大な人口を抱える中国の春節は、経済という観点から世界各国に与える影響は多大です。
 政府系シンクタンク、中国旅行研究員の予測では、春節期間中の海外旅行者は延べ650万人と過去最高を更新する見通しです。人民元高が追い風となり、前年を6%上回る中国人が世界に飛び出します。

 2018年の春節期間中の中国人海外旅行者に もっとも人気がある渡航先は日本です。前年比17%増の中国人観光客が訪日する見込みです。
 タイと台湾も春節期間中の中国人観光客にとって魅力的な渡航先であるようです。
 また、中国が目指す巨大経済圏構想「一帯一路」に協力しているニュージーランドは、近年中国との結びつきを強化しており、中国人に対する5年間有効のマルチビザを発給するに至っています。こうした理由から中国人観光客の間ではニュージーランド旅行は最近注目を集めているようです。加えて、ベトナムやフィリピンなど東南アジア諸国への旅行者数も増加しており、こういった国々は今後、日本のインバウンド市場にとってライバルになってくるかもしれません。

 海外のみならず中国国内でも帰省ラッシュの「民族大移動」が始まります。
 しかし、最近は「恐帰族」(帰省恐怖症候群)という新しい言葉が生まれています。
つまり、帰りたくても帰れない人が増えています。
その理由はさまざまで、例えば臨時出費の問題です。

中国の場合、春節は親戚や友人の間を互いに訪問し、新年の挨拶をする習慣があります。
 その際、訪問先に子どもがいれば、お年玉をあげるのが“鉄板”の風習。
多い場合は5000元〜1万元(約10万円〜16万円)にも達します。
一方、都会で会社勤めをする地方出身の独身男女も、この時期になると帰省をためらってしまうようです。
なぜなら、親からの「催婚」(結婚の催促)が煩わしく、避けたいからです。
 このように、それぞれの立場にそれぞれの理由があって、春節という現実から逃げる道を選ぶ中国人は少なくありません。そしてその「逃避行」先として選ばれるのが日本です。
 その理由は、「近い、安い、安全、安心」だからだと。もちろん春節期間中の旅行料金は普段より数倍高いのですが、それでも遠いヨーロッパよりは安いし、中国の国内旅行とあまり変わらないといいます。

 近年、春節期間中は中国の大都会では爆竹が厳しく禁止されています。
昔ながらの獅子舞いなど伝統行事も失われつつあり、「年味(お正月の雰囲気、儀式感、風情など)」が年々薄れてきて、春節の楽しみが少ないと思っている人が増えてきています。
 そんな中、日本の横浜や神戸の中華街で行われる獅子舞いなどの春節イベントは、中国の旅行者の目には珍しい光景として映るのかもしれません。
 伝統行事が日本の中華街で存続して、旅行者としての中国人が写真を撮る、そんな光景には、逆説的で不思議な感覚を覚えるのでしょう。
 春節を日本で過ごしたがる中国人が多い理由は、そんなところにもあります。

 中国特別行政区である香港も中国本国に負けず劣らず春節を盛大に迎えます。香港国際空港に降り立ったその雰囲気は、春節を迎える香港の人々の沸き立つような心の想いが反映された空気感だったのかも知れません。

 香港は特に伝統行事となると妥協はしないと、香港の人々は口外しています。
 「恭喜發財(ゴンヘイファッチョイ)!」。
 そんな新年の挨拶が飛び交い、お祝いムード一色になり、一年中ある行事の中でも最大の行事が旧正月です。香港が最も活気付く祭事で、数千年の歴史がある中国のこの伝統行事が世界的に有名な香港で行なわれるとあって国際的な行事となります。

 休日モードに街中が包まれ、ショップではセールとなり、若者は年配者から赤い袋に入ったお年玉をもらいますし、家庭も職場も大掃除をし、新年の言葉が書かれた赤い垂れ幕がドアの左右に掛けられ、寺は祈りとお香の煙で一杯となります。多くの外国人観光客が訪れ、より一層、国際色豊かな香港に磨きがかかる期間となります。

今回、視察に訪れた尖沙咀のメインストリートでは、香港の地元そして世界各国のパフォーマーや、色とりどりの山車がパレードする人気のイベントで、沿道には毎年多くの観客が集まります。また、旺角とビクトリアパークでは大規模なフラワーマーケットが開催されます。フラワーマーケットという名前ですが、縁起の良い植物はもちろん、伝統的な正月飾り、お土産、食べ物まで売られます。残念ながら、直に香港の春節の雰囲気を味わう機会はありませんが、いつもと違う空気を共有出来たことは貴重な体験になりました。

 香港でのビジネスの可能性は大きく広がっています。その可能性を現実にする術をもたなければいけません。その術の中心にあるのは、香港の人たちとのきめ細かなコミュニケーションによる、香港の真の情報を享受出来るかが鍵となってきます。
 香港の人々の気質は、プライドが高く、ブランド思考であり、お金に対しての執着心が強く、そのせいか仕事熱心でもあるようです。

 香港の歴史的背景がそういう気質を生み出したのでしょう。私たち日本人の感覚では分からない世界です。

 私たちが、度々香港の現地を訪れる理由は、そこにあります。
「郷に入っては郷に従え」。
ビジネスは、あくまで良好な人間関係があって初めて上手く成せる物事です。
香港アイデンティテーとは何か!?ということを感じ取り、それを言葉や振る舞いを通して発信することで、ビジネスパートナーとの最良な関係を築き上げ、今後のビジネス展開に光明を見いだせる手応えをつかみ始めました。

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